育成就労とは?
育成就労制度とは、これまでの技能実習制度に代わる新たな外国人労働者受け入れ制度であり、技能の習得に加えて、日本国内での長期的な労働力確保を目的とした制度です。従来の技能実習制度が「発展途上国への技能移転」を主目的としていたのに対し、育成就労制度では「人材確保と育成」が明確に打ち出されています。
この制度は、日本国内の人手不足解消を視野に入れつつ、外国人労働者が安心して働ける環境を整えることを目的としています。技能実習制度の課題を踏まえ、労働環境の改善、受け入れ体制の透明化、転籍の自由度の向上など、より実態に即した仕組みへと変更されます。
育成就労はいつから始まる?
育成就労制度は、2027年4月頃に開始される予定です。政府は、技能実習制度の見直しと並行して、新たな制度の枠組みを検討していました。
2023年に、有識者会議による報告書が発表され、制度の基本的な方向性が示されました。現在、法整備が進められており、今後は関係各所との調整を経て、実際の施行に向けた準備が進められます。
2024年に詳細な制度設計を決定、2025年以降に具体的な施行準備が進められる見込みです。※2025年2月より有識者による検討会が行われています。
一方、現在技能実習を行っている実習実施者や実習生には経過措置があり、施行日後にも一定の要件を満たせば技能実習を継続して行うことが可能です。
育成就労と技能実習制度の違い
目的が「人材の確保と育成」に変更される
これまでの技能実習制度は「技術移転」を目的としていましたが、実際には多くの業種で労働力不足を補うために活用されていました。この実態を踏まえ、育成就労制度では「人材の確保と育成」を明確な目的とし、人手不足が顕著な日本国内の労働市場に適応できる仕組みが整えられます。
受け入れ対象分野が変更される
育成就労制度では、従来の技能実習制度で認められていた職種の一部が見直され、特定技能制度との連携を意識した新たな分野・職種が設定されます。詳細は別記事にて解説しますが、今後は特定技能との移行を前提とした職種選定が進められる見込みです。つまり、これまでの技能実習の職種ごとのとらえ方から、特定技能に沿った産業分野というとらえ方になることが予想されています。
在留期間が3年となる
育成就労制度では、在留期間が原則3年に設定されます。従来の技能実習制度では1号(1年)・2号(2年)・3号(2年)の合計5年間の在留が可能でしたが、新制度ではシンプルに3年の期間に統一されます。
在留資格の要件に日本語能力が追加される
育成就労制度では、日本での就労に必要な基本的な日本語能力が求められるようになります。具体的な基準は今後策定される予定ですが、入国段階で「日本語能力試験(JLPT)N5レベル以上」(日本語能力A1相当以上)が要件となる可能性が高いとされています。
転籍が可能となる
従来の技能実習制度では、外国人による自発的な転籍(職場変更)は原則として認められていませんでした。しかし、育成就労制度では、一定の条件下で転籍が可能となります。これにより、万が一不遇な条件下に置かれた外国人労働者が適切な職場に移ることができるようになります。
一方で自由な転籍を認めると地方からより賃金の高い都市部に流入することも懸念されているため、転籍時の要件や受け入れ企業の人数的制限やそれまで雇用していた企業への補填などが検討されています。
外部監査人の設置が義務化となる
育成就労制度では、受け入れ企業に対して外部監査の実施が義務付けられます。これは、技能実習制度で問題視されていた労働環境の悪化や不正行為を防ぐための対策の一環です。
外部監査人は、企業の労働環境や待遇を定期的にチェックし、不適切な運用が行われていないかを確認します。これにより、外国人労働者の権利保護が強化されることが期待されています。
監理団体の名称が変更される
現在の「監理団体」という名称が廃止され、新たに「監理支援機関」という名称に変更され、許可の取得に当たっては要件をこれまで以上に厳格化し監理・支援の役割を十分に果たすことを求められるようになります。これは監理支援機関に独立性・中立性を担保させ制度を遵守させる狙いがあると思われます。
育成就労制度から特定技能制度に移行できる?
育成就労制度を修了した外国人労働者は、一定の条件を満たせば「特定技能1号」に移行することが可能となります。
特定技能1号に移行するための主な要件は以下の通りです。
- 対象職種に該当していること(特定技能制度の14分野)
- 技能試験・日本語試験に合格していること
- 育成就労制度を一定期間以上修了していること
特定技能1号に移行すると、最長5年間の在留が可能となり、その後、特定技能2号に移行することで無期限の在留資格を取得することも可能になります。育成就労制度から特定技能制度への移行イメージは下図の通りです。
まとめ
育成就労制度は、技能実習制度の問題点を改善し、より実態に即した外国人労働者の受け入れを実現するために新設される制度です。
- 2027年4月頃に開始予定
- 目的が「人材確保と育成」に変更
- 職種を特定技能に沿った産業分野に
- 在留期間は原則3年に統一
- 日本語能力要件が追加
- 転籍が可能に
- 外部監査の義務化
- 特定技能1号への移行を目的としている
この新制度によって、日本の労働市場における外国人の役割がより明確になり、労働環境の整備が進むことが期待されています。