本コラムでは、自動車整備職種で外国人技能実習生を受け入れるための要件や注意点について詳しく解説します。
技能実習実施者・受け入れ企業に関する要件
自動車整備作業で外国人技能実習生を受け入れるためには、基本となる技能実習制度に適合する体制を整えていることに加え、下記の要件を満たしている必要があります。
道路運送車両法(昭和26年6月1日法律第185号)第78条に基づき、地方運輸局長から認証を受けた自動車特定整備事業場であること。
※対象とする装置の種類が限定されていないこと
※対象とする自動車の種類が二輪自動車のみの自動車特定整備事業場は除く
技能実習指導員に関する要件
技能実習が計画通りに行われ、技術や知識をしっかりと習得できているかどうかを監督し、必要な指導をする役割がある技能実習指導員において、自動車整備職種の場合は以下の要件が必要です。
第1号技能実習又は第2第技能実習に係るものである場合
- 1級又は2級の自動車整備士の技能検定に合格した者
- 3級の自動車整備士の技能検定に合格した日から自動車整備作業に関し、3年以上の実務の経験を有する者
第3号技能実習に係るものである場合
- 1級の自動車整備士の技能検定に合格した者
- 2級の自動車整備士の技能検定に合格した日から自動車整備作業に関し3年以上の実務の経験を有する者
※自動車整備作業の実務経験とは、次に掲げる事業場等でいずれかの整備作業に従事したことをいいます。
事業場等
- 道路運送車両法第78条の自動車分解整備事業の認証を受けた者の事業場
- 道路運送車両法第94条の優良自動車整備事業の認定を受けた者の事業場
- 各都道府県自動車整備振興会から承認を受けた特定給油所(自家用乗用 自動車の4輪主ブレーキ及び駐車ブレーキがすべてディスク・ブレーキである自動車の1年ごとの定期点検整備(分解整備を除く)を確実に実施したとき「定期点検整備促進運動」による点検整備済ステッカーを交付できる給油所)
- 上記各号に掲げる事業場等と同等の整備作業を行い得るその他の事業場等(整備作業場所及び設備の説明が必要となります。)
整備作業
- 道路運送車両法施行規則第3条に規定する分解整備作業
- 上記に掲げるものと同等の自動車の点検、調整及び交換作業
(注:オイル、タイヤ、灯火装置、ワイパーブレード等の交換作業のみの軽微な作業は実務経験には認められません。)
自動車整備での技能実習生の受け入れ期間
基本となる技能実習2号までを良好に修了した者は技能実習3号または特定技能1号へ移行することが可能です。
但し、技能実習3号へ移行する場合は技能実習生を受け入れる実習実施者と監理団体の両者が優良の要件を満たす必要があります。
自動車整備での実習内容
技能実習においては、技能実習内容と割合が明確に決められています。
自動車整備業における主な実習内容は下記の通りです。
技能実習1号
入国からの1年間は基礎的な業務習得を目的とします。
各装置の車検、定期点検項目の良否判定及びそれに基づく整備の補助作業
ステアリング装置/ブレーキ装置/走行装置/サスペンション装置/動力伝達装置/電気装置/エンジン装置/排出ガス発散防止装置/附属装置
といった各装置の車検・定期点検項目の良否判定及びそれに基づく整備の補助作業を実施することになります。
技能実習2号
技能実習生は、技能実習1号終了時に技能検定基礎級に合格し、 在留資格変更許可を受けると技能実習2号へ移行することができます。この場合、技能実習1号で技能等を修得した実習実施機関と同一の機関で、かつ同一の技能等について習熟するための活動を行わなければなりません。
2号の2年間では、1年目の内容に加え各装置の特定整備・各種テスター・測定機器類による各装置の複雑な良否判定及びそれに基づく整備作業が加わります。
技能実習3号
技能実習3号に移行した場合、3号の2年間では各装置の故障診断作業及びそれに基づく整備作業が加わり、自動車整備職種における更なる専門的な内容を実習します。
自動車整備で技能実習生を受け入れる場合の注意点
自動車整備職種で実習生を受け入れるにあたり、以下の点に注意が必要です。
計画に沿った技能実習の実施
技能実習生には、技能実習計画の内容を実習実施前に十分に説明し理解させることが必要です。 また、計画の達成の度合いを確認するために技能実習日誌を作成する必要があります。
労働関係法令、労働・社会保険関係法令の適用
技能実習生は、通常の労働者と同様、労働基準法をはじめ労働関係法令等が適用されます。
賃金の支払い
技能実習生の賃金は、日本人が従事して受ける報酬と同等又はそれ以上の額の報酬としなければなりません。安価な賃金(最低賃金割れ)で日本人労働者が敬遠する作業だけをさせることは、技能等を習得、習熟する制度の目的から大きく逸脱する行為として禁止されています。
労働時間
技能実習生は、日本人と同様に一日の労働時間が8時間以内となっており、一週間であれば40時間が規定労働時間となります。労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合は少なく とも1時間の休憩時間を労働時間の途中に確保することが必要です。
また、少なくとも週に1日の休日(又は4週間に4日の休日)を確保しなければなりません。年次有給休暇においても取得する要件を満たしていれば、日本人同様取得する権利が発生します。
安全衛生管理体制の確立
実習実施機関は、安全衛生管理体制を確立するとともに、必要な危害防止措置などを講じなければいけません。安全衛生教育は、母国語の安全標識・説明や分かりやすい日本語の使用等、技能実習生が教育内容を確実に理解・実行することができるように配慮する必要があります。
実習生の人権の尊重
法定最低賃金を下回る時給を設定することや、パワハラ、理由なくパスポートや在留カードを会社で保管するといった行為は絶対に行ってはなりません。
まとめ
日本における自動車の定期点検や車検等による整備作業は、路上故障の未然防止など自動車の安全確保等に重要な役割を果たしています。
一方で、途上国では自動車の保有台数が大幅に伸びている中、車検等の制度整備や、故障の未然防止に繋がる点検整備に関する技術・技能の習得ニーズが高まっています。
技能実習生の受け入れは、制度の趣旨や法令を正しく理解したうえでの運用が求められます。企業にとっては、適切な教育体制と労働環境の整備が不可欠であり、外国人にとっては安心して働ける職場作りが大きなポイントです。
国土交通省では、自動車整備分野での実習生が修得すべき作業の内容や受入企業が配慮すべき事項などをガイドラインにまとめ、業界内への周知徹底を行っています。ぜひご参照ください。https://www.mlit.go.jp/common/001309761.pdf
九州で技能実習生の受入れをお考えの企業様はぜひアジアアグリ協同組合九州支部まで
ぜひご相談ください。