令和7年3月に福岡にある株式会社嶋建様と技能実習生2期生の現地面接を行うためにインドネシアに訪れました。
株式会社嶋建様は、1期生として、配管(建築配管作業)と内装仕上げ施工(ボード仕上げ工事作業)の2職種の技能実習生をインドネシアから3名受け入れられており、実習生との関係も社長及び部長を中心として非常に良好、また実習生も真面目に実習を行っていることから2期生の受け入れを決断した経緯がありました。尚、1期生の採用の頃はコロナ禍の影響がありオンラインでの面接であったために、今回はインドネシア実習生の背景も理解することで、よりよい実習期間を提供できるのではないかということで現地面接となりました。
そのような中、現地面接を知った実習生の一人(Aさん)が、「自分の実家は面接で訪れる町(マラン市)からそんなに遠くないので、社長と部長に是非訪問してほしい」という要望があり、企業様もそれならば、時間をみて訪問するとの約束をしておりました。
送り出し機関の社長にその旨を話すと、少し驚いた顔をして、「Aさん自身がそう言ったのですか?」と確認をしてまいりました。その理由は、Aさんのご実家はとても貧しい家であるため、その家庭を訪問してほしいということを本人が言った理由が最初分からなかったためでありました。尚、私たちの選定している送り出し機関は実習生の家族との関係も大切にしている送り出し機関のため、社長はAさんの家庭状況を把握していました。
面接が終わり、2期生を決めた翌日、私たちはマラン市から片道1時間半をかけてAさんのご実家に伺いました。ちょうどラマダン明けであり(日本のお正月のような雰囲気)、お菓子やお祝いを持参し訪問しました。

非常に小さな村で、ご実家は確かに生活が豊かという感じはありませんでした。送り出し機関の社長も以前訪れた時に壊れて雨漏りしていた屋根はAさんの兄弟含め2名が日本に技能実習生として出ているから修理しているかもしれないという話でしたが、応接の部屋のその箇所は何も修理はされていませんでした。
修理されていなかったのには理由がありました。Aさんの本当のご両親が早くなくなり、おじさんとおばさんが育ての親として育てたために、大家族となり、それでできた借金の返済等に充てたためであったとのことでした。ただ、驚いたことにその家庭では自分の家は技能実習生として日本で実習している子供が2名いるからと更に貧しい家庭への支援もおこなっているとのことで、それはAさん自身も送金の際にそのような活用も望んでいるという話がありました。

また妹が2名おり、その教育費として利用してほしいという希望を伝えていることも知りました。そして、Aさんが訪問して欲しいといった理由は、素晴らしい実習実施者である株式会社嶋建の社長と部長を両親に紹介したい。そして両親からもお礼を言わせてほしいという気持であったからであることをご両親から聞くことができました。

Aさんのご実家を訪問して、技能実習生となり、遠い異国の地に実習に出る背景の一端を垣間見た気がしました。日本でもかつては「金の卵」と言われた段階の世代が就職列車に乗って都会に出ていきました。地方だと貧しいからという理由だけでなく、そこにはその地域全体をよくしたいなど様々な想いを背負って、いずれは「故郷に錦を飾る」ために出ていったのです。時代や場所を超え、似たような気持がそこにはある気がしました。


最後に社長と部長が訪問したことをAさんの両親は大変喜んでくださったことは言うまでもありません。Aさん自体が、本当に訪問してくれたという事実に大変感動して社長と部長への信頼を更に厚くしたとの話を聞けたことはよかったです。