外国人技能実習生の受入れを検討している方の中には、外国人に対して雇用保険や社会保険などの各種保険に加入しなければならないのか疑問を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 結論から申し上げると、外国人技能実習生であっても例外はなく、日本人と同じように社会保険の加入が義務付けられています。

加入義務のある保険について

  1. 健康保険(または国民健康保険)
  2. 介護保険
  3. 雇用保険
  4. 労働者災害補償保険(労災保険)
  5. 国民年金保険・厚生年金保険

本コラムでは、上記の加入義務のある保険に加え、任意保険についても詳しく解説します。

健康保険

 健康保険は、民間企業で働く人が業務以外での病気やけがなどによる病院の受診費用の負担を軽減させるために給付を行うものです。外国人技能実習生においても一部の事業を除いて強制適用となっており、実習実施機関で技能実習を開始する日から資格を取得し、被保険者となります。

健康保険に加入しない場合には、国民健康保険に加入する必要があります。

 保険料の負担は外国人技能実習生の賃金額や、協会けんぽや組合健保等、加入先によって異なります。被保険者である期間に毎月徴収され、保険料は事業主と外国人技能実習生とで折半することになります。

介護保険

 2000年に施行された介護保険制度ですが、介護保険への加入は国民の義務であり、技能実習生においても日本人と変わらず介護保険の被保険者となり、同様に納める必要があります。保険料は、国民健康保険・健康保険とあわせて徴収されることになります。

雇用保険

 雇用保険は、労働者を1人でも雇用している事業においては強制適用となっており、技能実習生に対しても適用され、労働者の安定した雇用と雇用の促進を目的とされており、雇用保険に加入していることで、失業した場合や収入が減った場合に条件を満たせば「基本手当(失業給付)」や「高年齢雇用継続基本給付金」、「育児休業給付金」、「介護休業給付金」などの給付を受けることができます。

 新たに技能実習生を雇用した場合には、雇用契約を結んでいる場合、雇用保険に加入することが求められますので、雇用した日の翌日から10日以内にハローワークへ必要な手続きを行う必要があります。

 技能実習生においても、通常の労働者と同じく給与から雇用保険料が天引きされ、万一、仕事を失った場合には、失業保険の給付を受けることができます。
※農林水産事業の一部では任意適用

労働者災害補償保険(労災保険)

 労働者災害補償保険(労災保険)は、雇用人数や日数、雇用形態に拘らず、労働者を1人でも雇用している事業場に対して、必ず加入することが義務付けられている保険であり、業務中や通勤途中の事故によって、怪我や病気、障害、または死亡したときに、被害を負った労働者やその遺族は一定の給付金を受け取ることができます。

 職種や雇用形態にかかわらず、事業者と労働契約を結び、賃金が支払われている方は適用される為、技能実習生も同様です。

国民年金・厚生年金

 日本には、国民年金および厚生年金の2つの主要な年金制度があります。

 国民年金は、 日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての方が加入 しなければなりません。令和6年度における国民年金保険料の金額は、1カ月あたり16,980円となっています。

 一方、厚生年金保険とは、 適用事業所に勤務する70歳未満の会社員や公務員などの被用者が加入する年金 のことを指し、厚生年金保険の加入者は、国民年金の第2号被保険者であり、 毎月給与から厚生年金保険料を支払うことで国民年金保険料も納付したことになります。

 技能実習生を雇用する場合、厚生年金の被保険者となりますので、資格取得日から5日以内に年金事務所に対して届出の提出が必要です。給与から天引きされる形で保険料が支払われ、将来的に老後の生活を支える年金として積み立てられます。

 万一、被保険者の期間中に障害や死亡といった保険事故が発生した場合には、適切な保険給付が行われることになります。

 また、このような保険事故が発生しなかった場合においても、帰国の際に脱退一時金が支給されます。
※厚生年金の適用事業所でない場合には、国民年金の被保険者となります。

脱退一時金について

 日本国籍を有しない方が、国民年金・厚生年金保険(共済組合等を含む)の被保険者(組合員等)資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。

【脱退一時金の請求要件の主なものは以下の通りです】

  1. 請求者が、外国人であること
  2. 厚生年金保険の保険料を6ヶ月以上納めていること
  3. 日本に住所を有しないこと
  4. 厚生年金保険の障害年金等を受ける権利を有していないこと
  5. 出国から2年以内であること

脱退一時金の詳細や脱退一時金支給額の計算方法については、日本年金機構ホームページにある「脱退一時金の制度」から確認することができます。

脱退一時金の制度|日本年金機構

任意保険について

 健康保険や雇用保険など、加入義務のある保険について解説しましたが、任意で加入できる保険についてもご紹介します。

 社会保険だけではカバーできない部分も補うことができるため、万が一のためにも技能実習生を受入れる場合においては、各種任意保険に加入しておくことが推奨されます。

外国人技能実習総合保険

 技能実習総合保険とは、国際人材協力機構(JITCO)や民間保険会社が提供しているサービスに加入することで、健康保険の3割負担部分が保証される大変有用な保険ですが、制度上としては企業側が費用を支払って加入する義務のない任意保険に該当します。

 しかしながら、初めて日本にきた外国人については、病院代等の支払いが発生することを嫌がり、重病化するまで我慢してしまう傾向があることから、技能実習総合保険加入をお勧めしています。

【支払い対象の保険金の一例】

  • 治療費用保険金、死亡・後遺障害保険金
  • 疾病治療費用保険金、疾病死亡保険金
  • 日常生活賠償保険金・救援者費用等保険金

詳しくは以下をご参照ください。

商品概要 – 株式会社 国際研修サービス

自転車保険について

 技能実習生は、企業より提供された自転車を使用し、実習先に通勤するケースが多く見られます。通勤途中に自転車事故(賠償責任)を起こす可能性もゼロではありません。

 そこで、技能実習総合保険と同様、自転車保険に加入することも一つの方法です。自転車で走行中に交通事故を起こしてしまっても、賠償金などのカバーをすることができます。
※技能実習総合保険のサービスによっては、自転車保険が含まれていることもあります。

まとめ

 技能実習生を受入れる場合には、日本人同様社会保険への加入が義務付けられていることと同時に、所要機関に速やかに届出を行う必要があることに注意が必要です。

 また、任意保険のサービスも幅広く展開されていますので、加入することで実習生が安心して技能実習が行える環境を提供することが可能です。

 各種社会保険への加入は、労働基準法や入国管理法によって定められていますので、法令違反で受入れ停止処分とならないように、十分に理解した上で技能実習生の受入れをご検討いただきますようお願いいたします。

 技能実習生へ健康保険・厚生年金保険をご案内する際は、日本年金機構ホームページに各国の制度説明パンフレットが展開されておりますのでぜひご参照ください。

Employees’ Pension Insurance and Employees’ Health Insurance(厚生年金保険・健康保険制度のご案内)|日本年金機構

Enrollment in Social Insurance System(社会保険制度加入のご案内)|日本年金機構

Social Insurance for Everyone(みんなのための「社会保険」)|日本年金機構