外国人の技能実習・特定技能両制度の見直しを検討する政府有識者会議は2023年4月28日に、人材育成を掲げる技能実習を廃止し、「人材確保」を目的に加えた新制度創設を提案する中間報告を示した。

有識者会議は大学教授や自治体首長ら15人で構成され、座長は国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長が務める。2022年12月から制度の見直しについて議論が開始され、今年に入り関係者から聞き取りを重ねてきた。

技能実習・特定技能両制度の見直しが行われる背景

  • 日本企業の人手不足の深刻化している
  • 途上国に技術を伝える「国際貢献」を目的に1993年創設された「技能実習」が、実態は労働力の確保策として機能されていた
  • 賃金の未払いなどに関する労働問題や、暴力・パワハラ問題が後を絶たず、国内外からの批判が高まっている。

そのため、人権に配慮した上で、受け入れを進め、技能を習得した外国人材の中長期的な就労を促すことが求められています。

今後の方針

  • 新制度では、非熟練労働者の受け入れから育成まで行い、即戦力として位置付けられている「特定技能」への移行を促すため、両制度の職種をそろえる。
  • 技能実習では原則禁止とされていた転籍の要件を緩和する。
  • 実習生の受け入れを仲介する送り出し機関や監理団体、受け入れ先の監督や実習生支援を担う外国人技能実習機構は現状のまま維持される見通しとなっている。今後は、事業者の要件厳格化や実習機構の体制強化を検討する。
  • 政府は今月、熟練労働者として永住や家族帯同が認められる「特定技能2号」の受け入れ対象を大幅に拡大し、2分野から11分野とする方針も明らかにしている。

受け入れの枠組みは維持されており、不適切な事業者の排除や、支援体制の在り方などをさらに議論を進め、秋ごろに最終報告をまとめる見通しとなっています。

補足-技能実習と特定技能について-

外国人技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識を発展途上国へ移転することで、人材育成を目的とする外国人研修制度を補う形で1993年に始まった。

2017年11月には「外国人の技能実習の適正な実務及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行され、新たな技能実習制度が開始されました。

2022年末時点の実習生は約32万5千人であり、職種としては建設や食品製造関係が多い。

特定技能制度は19年、労働力不足に対応し、即戦力の外国人を受け入れるために創設された。

技能実習からの移行が約7割を占め、最長5年働ける1号(2023年5月現在12職種)と、熟練労働者として永住も可能な2号(2023年5月現在2職種)がある。

2023年2月時点で1号は約14万6千人、2号は10人です。