大分県の宿泊業界では近年、地域における担い手の確保が難しくなっている状況が続いており、その解決策として外国人技能実習生の受け入れが広がっています。しかし実際には、「受け入れ手続きが分からない」「言葉や文化の違いをどう乗り越えるべきか迷う」と感じている事業者の方も多いのではないでしょうか。
以下のようなお悩みはありませんか?
- 担い手確保への対策として有効か知りたい
- 受け入れに必要な手続きや準備が分からず不安
- 言語・文化の違いがサービスに影響しないか心配
- 宿泊業で実習生が従事できる業務範囲を知りたい
結論として外国人技能実習生の受け入れは、適切な準備と支援体制を整えることで担い手不足解消だけでなくサービス品質の向上にもつながります。なぜなら、統計からも宿泊業界での受け入れが増加しており、実習生が宿泊業業界の技術習得をし活躍している事例が確認できるためです。
この記事でわかること
- 大分県宿泊業界における技能実習生受け入れの最新動向
- 宿泊業における技能実習生のメリット・課題・注意点
- 実習生受け入れに必要な手順と準備の進め方
- 宿泊業で実際に従事できる業務内容やよくある質問
【記事のまとめ】
大分県の宿泊業界では別府市にあるAPU(立命館アジア太平洋大学)の留学生を中心に外国人を積極的に活用してきたこともあり、外国人技能実習生の受け入れが進み、担い手不足解消と多言語対応の強化に役立っています。統計では受け入れ数が増加しており、実習生が活躍していることが分かります。適切な住環境の整備、教育体制の準備、監理団体との連携が成功の鍵であり、言語や文化の壁も支援体制が整えば円滑に乗り越えられます。適正な手順を踏みながら受け入れを行うことで、企業と実習生双方にとって良い結果を生み出します。外国人技能実習生の事ならアジアアグリ協同組合九州支部へご相談ください。
目次
大分県宿泊業界における外国人技能実習生受け入れの現状【統計情報・市場概況】
大分県は別府・湯布院・日田など全国的に知られた温泉地を抱え、観光・宿泊産業が地域経済の大きな柱になっています。インバウンド需要も戻りつつあり、週末や連休、イベント開催時には多くの宿泊施設が満室に近い状況となる一方で、「手が回らず、取りこぼしている売上がある」という声も増えています。
地元の若年層人口は減少し、都市部への流出も続いています。そのため、フロント・客室清掃・レストラン・浴場管理など、宿泊業に必要なポジションをすべて日本人だけで埋めることが難しくなってきました。求人広告を出しても応募が少ない、採用しても半年〜1年で退職してしまうといったケースは、大分県内の多くの旅館・ホテルで共通する課題です。
こうした環境の中で、安定的な人材確保の一手として注目されているのが外国人技能実習生を含む外国人材の受け入れです。特に大分県では令和5年にベトナムホーチミン市の大学との連携をはじめ、外国人材の活用を積極的に行っている地域です。また宿泊分野の技能実習生の活用は全国的に見ても増加傾向にあり、大分県でも別府市や由布市を中心に、実習生を採用する宿泊施設が少しずつ広がっています。特に、
- 客室清掃やベッドメイク
- 館内や大浴場の清掃
- 配膳・下膳などの料飲サービス補助
- フロントやロビーでの案内補助
といった業務において、技能実習生は重要なポジションとなっています。
宿泊業が技能実習の対象職種に追加されたことで、制度上も「宿泊職種(接客・衛生管理作業)」として受け入れが可能になり、国内の宿泊事業者が制度を活用しやすい環境が整ってきました。大分県の宿泊業界でも、すでに実習生を受け入れている施設の成功事例が増え、今後さらに受け入れ数が増加していくことが予想されます。
宿泊業で外国人技能実習生を受け入れるメリット
1. 慢性的な人手不足の解消とシフトの安定
宿泊業は、曜日や季節による業務量の波が大きく、繁忙期には一気に人手不足が表面化します。
外国人技能実習生は、原則3年間(条件を満たせば延長も可)在籍する前提で受け入れるため、短期アルバイトや派遣スタッフに比べ、計画的なシフト設計がしやすくなります。
特に以下のようなポイントでメリットが大きくなります。
- 早番・遅番・夜勤など時間帯の偏りを緩和しやすい (※夜勤に行う業務に関してはさせられない業務もございますので、詳細については当組合にお問い合わせください)
- 繁忙期に合わせた人数調整がしやすい
- 仕事を覚えた実習生が3年間在籍するため、教育コストが回収しやすい
「毎年一から教え直し」という状況から脱却しやすくなることは、現場の負担軽減という点でも大きな意味があります。
2. 多言語対応・国際的な接客力の向上
大分県には海外からの観光客も増えており、英語や中国語、韓国語などでの対応が求められる場面が確実に増えています。技能実習生は、母国語に加えて英語や日本語をある程度習得している人材も多く、
- チェックイン時の簡単な案内
- 館内設備の説明
- 周辺観光情報の案内
などで大きな力を発揮します。
また、同じ国から訪れる観光客に対して母国語で案内できることは、宿泊者にとって非常に安心感があります。「スタッフが自分の言語を話せる」というだけで、施設への信頼度が高まり、リピーターや口コミにつながることも少なくありません。
3. 職場の活性化とスタッフの成長
外国人技能実習生が働くことで、職場には自然と「教える文化」「助け合う文化」が生まれます。
具体的には日本人スタッフにとってはこれまで感覚的に行っていた業務を言葉やマニュアルに落とし込む必要が出てくるため、業務の可視化と改善が進みます。
- 手順を整理して説明する力が付く
- 多様な価値観に触れることで視野が広がる
- 「自分が教える立場」という意識が生まれ、責任感が高まる
結果として、日本人スタッフの離職率も下がり、組織全体の雰囲気が良くなったという宿泊施設もあります。
4. 地域とのつながり強化
技能実習生は地域のイベントや清掃活動への参加などを通じて、地域社会との接点を増やしていくことができます。
大分県のような観光地・温泉地では、自治会や商店街との関係性も重要です。実習生が地域に溶け込むことで、「外国人が増えて不安」という声から、「一緒に地域を支えてくれる仲間」というポジティブな評価へ変わっていく効果も期待できます。
宿泊業で外国人技能実習生を受け入れる際の課題と対策
メリットが多い一方で、受け入れにあたり、いくつかの課題やリスクもあります。ここでは主なポイントと、その対策について整理します。
1. 言語・文化の壁によるコミュニケーションギャップ
最も分かりやすい課題が「言葉の壁」です。特に受け入れ初期は、日本語での指示がうまく伝わらず、
- 清掃の抜け漏れ
- 時間の勘違い
- 作業手順の誤解
といったミスが発生しやすくなります。
【対策の例】
- 業務マニュアルを写真やイラスト入りで作成する
- 清掃手順を動画で撮影し、何度も見返せるようにする
- 指示は短く区切り、一文をシンプルにする
- わかりにくい専門用語を使わない
文化面でも、例えば
- 靴を脱ぐ/脱がない
- 浴場・温泉のマナー
- ゴミの捨て方
など、日本独特のルールが多く存在します。これらは「一度説明したら終わり」ではなく、繰り返し丁寧に伝える姿勢が必要です。
2. 生活面のサポート不足による不安・離職
技能実習生は、仕事だけでなく生活のほぼすべてが初めての経験です。
銀行口座、携帯電話、公共交通機関の利用、病院の受診方法、買い物の仕方、ゴミ出しルールなど、最初は何もかもが分からない状態からスタートします。
【対策の例】
- 生活指導員を明確に決め、窓口を一本化する
- 到着直後に「生活オリエンテーション」を実施する
- 周辺のスーパー・病院・役所・バス停などを一緒に回る
- 休日の過ごし方、トラブル時の連絡先などを事前に共有する
生活の不安が解消されれば、仕事への集中度も高まり、結果的にパフォーマンス向上と定着につながります。
3. 労務管理・法令遵守の徹底
技能実習生も、日本人と同じく労働基準法や最低賃金法の適用対象です。
「人手不足だから」といって長時間労働や休日不足が続くと、制度違反となるだけでなく、実習生の心身にも悪影響が出てしまいます。
【チェックしたいポイント】
- 所定労働時間と残業時間の管理はできているか
- シフト表が適切に作成・保存されているか
- 有給休暇の付与・取得が適切に行われているか
- 宿舎費・水道光熱費などの控除額は妥当か
また、技能実習計画で定めた「実習内容」と、実際にさせている業務の齟齬にも注意が必要です。例えば、清掃・配膳・接客補助が中心の計画にもかかわらず、肉体労働中心の雑用ばかりをさせていると、計画違反とみなされるおそれがあります。
4. 日本人スタッフとの連携・理解不足
技能実習生を受け入れる際、日本人スタッフの理解が十分でないと、
- 「なぜ外国人を採用するのか」
- 「指導まで自分たちがやるのか」
といった不満が出てしまうこともあります。
【対策の例】
- 受け入れ前に社内説明会を行い、目的と期待を共有する
- 指導役のスタッフには事前に役割を説明し、評価にも反映する
- 実習生の成長や貢献を、ミーティングなどで共有する
「一緒に職場を支えてくれる仲間」という認識を持ってもらうためのコミュニケーションが非常に重要です。
外国人技能実習生受け入れの手順と必要な準備(宿泊業)
ここからは、実際に大分県の宿泊施設が技能実習生を受け入れる際の流れを、できるだけ具体的に整理します。
1. 受け入れ方針・人数・業務内容の整理
まずは、社内で受け入れの目的を明確にします。
- どの部署で
- 何人くらい
- どのような業務を
- どの期間担当してもらうのか
をざっくり決めます。
この段階で、将来の特定技能への移行など、長期的な人材戦略も合わせて検討しておくと、制度の使い方がより明確になります。
2. 監理団体への相談
技能実習生の受け入れは、多くの場合「監理団体(協同組合など)」を通じて行います。
監理団体は、
- 送り出し国の機関との調整
- 実習計画の作成・申請支援
- 在留資格手続きのサポート
- 定期訪問・指導
等を担う専門機関です。
大分県内や九州エリアで宿泊業の実績を持つ監理団体に相談し、受け入れ条件や費用、サポート内容などを比較検討すると良いでしょう。
3. 実習計画の作成と申請
受け入れ方針が固まったら、監理団体とともに「技能実習計画」を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)への申請を行います。
計画には、
- 実習の目的・期間
- 担当業務の内容
- 指導方法・評価方法
- 宿舎や生活指導体制
等を明記します。
この計画はのちの監査や指導の基準にもなりますので、実際の運用をイメージしながら慎重に作成することが重要です。
4. 候補者との面接・採用決定
送り出し機関が現地で候補者を募集し、企業はオンライン面接や現地面接を通じて候補者を選びます。
この際、
- 日本語の理解度
- 接客に対する意欲
- 宿泊業への興味
- 地方での生活への理解
等を確認すると、ミスマッチを減らすことができます。
5. 来日前準備と入国手続き
採用が決まると、現地で日本語や生活ルール、基本的なマナーなどの事前教育が行われます。
一方、企業側では、
- 宿舎の契約・準備
- 受け入れ初日のスケジュール作成
- 社内向けの受け入れ説明
等を進めます。
監理団体を通じて在留資格認定証明書の申請を行い、許可が下りればいよいよ入国となります。
6. 入国後講習と配属・フォロー
入国後まずは1か月程度の講習期間があり、日本語や日本のルール、交通安全などの教育を受けます。その後、いよいよ宿泊施設への配属となります。
配属直後の数か月は、
- OJTで業務を丁寧に教える
- 週1回などこまめに状況確認をする
- 日本人スタッフとの交流の場を設ける
等、手厚いフォローが必要です。
半年〜1年をかけて、「教えられる側」から「自走型」として育てていくイメージを持つと良いでしょう。
まとめ
大分県の宿泊業界における外国人技能実習生の受け入れは、単なる人手不足対策にとどまらず、
- サービスの質向上
- 多言語・多文化への対応力強化
- 組織の活性化
- 地域との新しいつながり創出
といった多方面の効果を生み出す可能性を持っています。
一方で、言語・文化の違い、生活支援、労務管理、日本人スタッフの理解など、乗り越えるべきハードルも存在します。しかし、これらは事前準備と継続的なフォローによって、十分にコントロールできるものです。
「大分 宿泊 外国人技能実習生」というキーワードに関心を持っている段階であれば、すでに一歩目は踏み出しています。あとは、信頼できる監理団体やパートナーと連携しながら、自社に合った形で受け入れ体制を整えていくことが重要です。技能実習生が笑顔で働き、宿泊施設にとってなくてはならない存在として成長していくことが、結果として地域全体の観光力向上にもつながっていくはずです。
