日本の食品製造業界は、高い安全基準を維持し、高品質な製品を供給することを目指す一方で、深刻な労働力不足に直面しています。この問題の対応策の一つとして、外国人技能実習生の受け入れが重要な役割を果たしています。

本コラムでは、食品製造業分野で外国人技能実習生を受け入れるために知っておくべき要件と注意点をわかりやすく解説します。

食品製造業の受け入れ可能職種・作業

「食品製造業」は、11職種の19作業に分類されています。

コード職種作業
4-1-1缶詰巻締缶詰巻締
4-2-1食鳥処理加工業食鳥処理加工作業
4-3-1加熱性水産加工食品製造業節類製造
4-3-2加熱乾製品製造
4-3-3調味加工品製造
4-3-4くん製品製造
4-4-1非加熱性水産加工食品製造業塩蔵品製造
4-4-2乾製品製造
4-4-3発酵食品製造
4-4-4調理加工品製造
4-4-5生食用加工品製造
4-5-1水産練り製品製造かまぼこ製品製造作業
4-6-1牛豚食肉処理加工業牛豚部分肉製造作業
4-6-2牛豚精肉商品製造作業
4-7-1ハム・ソーセージ・ベーコン製造ハム・ソーセージ・ベーコン製造作業
4-8-1パン製造パン製造作業
4-9-1そう菜製造業そう菜加工作業
4-10-1農産物漬物製造業農産物漬物製造作業
4-11-1医療・福祉施設給食製造医療・福祉施設給食製造作業

技能実習生の受け入れ方式

外国人技能実習生を企業が受け入れる方式は、「企業単独型」と「団体監理型」があります。

また、その段階ごとに在留資格が分かれます。移行業種は限定されていますが、食品製造業の職種は、下記の技能実習3号まで移行が可能です。

1年目技能実習1号
2〜3年目技能実習2号
4〜5年目技能実習3号

「企業単独型」と「団体管理型」の違いは以下の通りです。

企業単独型

日本の企業等が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式

団体管理型

非営利の管理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等で技能実習を実施する方式

技能実習生を受け入れるための要件

技能実習生を受け入れるには、以下の項目をすべて満たす必要があります。

技能実習指導者・受け入れ企業に関する要件

  • 常勤の職員で習得しようとする技能等について5年以上の経験を有する技能実習指導員及び生活指導員を配置していること
  • 技能実習日誌を作成し備え付け、技能実習終了後1年以上保存すること
  • 技能実習生に対する報酬が 日本人が従事する場合と同等額以上であること
  • 他に技能実習生用の宿舎確保、労災保険等の保障措置、経営者等に係る欠格事由等の要件を備えていること

外国人技能実習生が食品製造業で働くための要件

  • 技能実習生が18歳以上であること
  • 帰国後に本制度で修得した技術を活かした業務に従事することを予定していること。
  • 本国で技術実習を受けたいと考えている業務に従事していた経験がある、もしくは団体監理型技能実習を利用しなければならない特別な事情※があること。

※「特別な事情」には以下の事情が含まれます。

①本国の職業訓練学校を卒業したなどの事情

②技能実習を受けることが日本と外国との間の技術協力上必要であること
・本国、もしくは住所がある地域の地方公共団体等から推薦を受けていること
・過去に第1号技能実習を利用したことがないこと

受け入れできる実習生の人数

技能実習生の受け入れ人数枠は、常勤職員数によって異なります。

技能実習生の受け入れ枠

個人事業主である農家の常勤職員については、確定申告をした前年分の収支内訳書(農業所得用)のうち「事業専従者の氏名等」欄に氏名の記載があるか、また当該専従者の就労状況等を確認した上で常勤職員として認められるかが判断されます。

技能実習生から特定技能への移行条件

特定技能「飲食料品製造業」の対象となるのは、以下の9業態です。

  1. 食料品製造業
  2. 清涼飲料製造業
  3. 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
  4. 製氷業
  5. 総合スーパーマーケット(ただし食品製造を行うものに限る)
  6. 食料品スーパーマーケット(ただし食品製造を行うものに限る)
  7. 菓子小売業(製造小売)
  8. パン小売業(製造小売)
  9. 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業(ただし豆腐・かまぼこ等加工食品の製造を行うものに限る)

また、上記「1.食料品製造業」の内訳は以下の通りです。

  1. 畜産食料品製造業
  2. 水産食料品製造業
  3. 野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業
  4. 調味料製造業
  5. 糖類製造業
  6. 精穀・製粉業
  7. パン・菓子製造業
  8. 動植物油脂製造業
  9. その他の食料品製造業(でんぷん、めん類、豆腐・油揚げ、あん類、冷凍調理食品、惣菜、すし・弁当・調理パン、レトルト食品等)

試験について

特定技能1号外国人として飲食料品製造業分野の業務に従事する場合には、技能試験及び日本語試験の合格等が必要となります。(従事する業務区分に応じ、技能実習2号を良好に修了した者については上記の試験等が免除されます。)

技能測定試験の試験日程、申込方法等

飲食料品製造業技能測定試験は、一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(略称:OTAFF)が実施します。

試験日程、申込方法、その他情報は下記URLよりご確認ください。

OTAFF 一般社団法人外国人食品産業技能評価機構 特定技能1号・2号技能測定試験

特定技能「飲食料品製造業」にて雇用をするには

農林水産省が示す以下の条件(①~③の3条件もしくは④)を満たす必要があります。

①食品産業特定技能協議会の構成員になること

②食品産業特定技能協議会に対し、必要な協力を行うこと

③農林水産省が主導する調査に必要な協力を行うこと

④支援を外部委託する場合には、上記の①~③を満たしている登録支援機関に委託すること

食品産業での技能実習生の受け入れ状況

令和4年6月末時点の技能実習生は約33万人であり、その内、食品製造関連の技能実習生は約6.4万人(約19%)。 また、食品製造関連のうち、そう菜製造業の技能実習生が約3.1万人で食品製造関連の約49%を占めます。

引用:農林水産省 飲食料品製造業分野における特定技能外国人受入れの制度について

食品製造業で技能実習生を受け入れる場合の注意点

食品製造業で技能実習生を受け入れるには、食品衛生法に基づく営業許可※を有しており、これに基づいて「惣菜」を製造していることが必要です。

※食品衛生法に基づく営業許可

  • そうざい製造業(サラダ、煮物、揚物、焼物等の製造)
  • 複合型そうざい製造業(HACCPに基づく衛生管理を行う惣菜の製造)
  • 冷凍食品製造業(惣菜の冷凍品の製造であり、小売販売用に包装された農水産物の冷凍品は対象外)
  • 複合型冷凍食品製造業(HACCPに基づく衛生管理を行って製造する惣菜の冷凍品の製造であり、小売販売用に包装された農水産物の冷凍品は対象外)
  • 飲食店営業(弁当、調理パン等の製造)

〈詳細については「技能実習計画の審査基準」をご参照下さい。〉

まとめ

技能実習生の受け入れにおいて、技能実習生の権利保護と適正な実習環境の整備は必要不可欠です。技能実習生の受け入れにあたっては、単に法令を守るだけでなく、実習生一人ひとりをかけがえのない人材として尊重し、真摯に向き合う姿勢が欠かせません。こうした取り組みが、受け入れる側と実習生にとって有意義な成果につながるはずです。これからの食品製造業の発展を見据え、制度の目的を正しく理解し、実効性のある運用を継続していくことが重要です。

食品製造業職種における外国人の受け入れについて、不明点などがございましたら、ぜひ弊組合までご相談ください。