昨今、日本のビルクリーニング業界では人手不足が深刻化しており、その対応策として外国人技能実習生の受け入れが増加しています。本稿では、ビルクリーニング分野における技能実習制度の内容、受け入れ要件、技能検定、特定技能への移行などについて詳しく解説します。

ビルクリーニング職種の技能実習の作業内容は?

そもそも技能実習制度は、「技能実習1号(1年目)」「技能実習2号(2~3年目)」「技能実習3号(4~5年目)」の3段階で構成されています。各段階には異なる要件や試験があり、段階を進むごとにより高度な技術や知識が求められます。

技能実習1号での作業内容(1年目)

技能実習1号では、基本的なビルクリーニング作業の習得を目的とします。具体的な内容は以下の通りです。

  • 建物内外の清掃作業(床、窓ガラス、トイレ等)
  • 掃除機、モップ、ダスター等の使用方法
  • 客室のベッドメイク業務
  • 清掃用具の管理・洗浄
  • 安全衛生管理(危険物の取り扱い、作業時の注意点)

技能実習2号での作業内容(2~3年目)

2号に進むには、技能実習評価試験(基礎級)に合格することが必要です。(技能実習1号を開始して約6~8カ月後に基礎級を受験します。※筆記も実技も合格必須です。)2号に移行してからは、より実践的で効率的な清掃業務を習得します。

  • 各種機械(ポリッシャー、カーペットクリーナー等)の操作
  • 定期清掃・特殊清掃業務
  • 品質管理、作業工程の把握
  • 後輩指導の補助など

2号2年目から3年目になると実習生としての自立性が求められ、責任ある作業も増えていきます。

技能実習3号での作業内容(4~5年目)

2号修了後、優良な実習実施者のみが3号へ進めます。この段階では、熟練の技術者としての役割を担います。

  • 高所作業や特殊洗浄技術の習得
  • 作業計画や清掃スケジュールの策定補助
  • 清掃品質のチェック・改善提案
  • チームリーダー的な役割

3号は、より高度な清掃技術と現場での管理能力を身につけるための段階です。

ビルクリーニング分野の外国人技能実習生の受け入れ状況は?

ビルクリーニングは、2019年より技能実習制度の対象職種に加わりました。特に不特定多数の利用者が利用する建築物が多い都市部では人手不足が深刻なため、多くの企業が外国人実習生を受け入れています。主にベトナム、インドネシア、フィリピンなどの国からの受け入れが多く、清掃業界にとって貴重な戦力となっています。

技能実習生を受け入れるための要件は?

技能実習生に関する要件は下記の通りです。

  • 年齢は18歳以上で、実習を希望する職種に関連する経験や知識があることが望ましい
  • 日本語能力(N5程度以上)があると望ましい
  • 母国の送出し機関を通じた選抜と事前教育を受けていること
  • 健康状態が良好であること

技能実習実施者(受け入れ企業)に関する要件は?

技能実習生を受け入れる実習実施者は以下の要件を満たす必要があります。

  • 建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)第12の2第1項に揚げる登録業種のうち、第1号「建築物清掃業」または第8号「建築物環境衛生総合管理業」の登録
  • 適切な労働環境の整備(賃金、労働時間、休日等)
  • 技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員の配置
    ※技能実習責任者とは常勤の役員または職員の中から過去3年以内に技能実習責任者講習を受けた方を指す 初めての受け入れ企業だと申請前に受講が必要
    ※技能実習指導員は同作業5年以上の経験を持つ常勤職員でなければならない
  • 実習の記録管理や報告義務の履行
  • 監理団体(協同組合など)との連携

以上のように適正な体制が整っていない場合、受け入れは認められません。

受け入れ可能な技能実習生の人数は?

他の受け入れ可能職種と同様、受け入れ人数には企業の常勤職員数に応じた上限があります。原則として、常勤職員数に応じて以下の通りです。

常勤職員30人以下:実習生最大3人まで
常勤職員31~40人:実習生最大4人まで
常勤職員41~50人:実習生最大5人まで

これ以降、常勤職員の人数に比例して上限が増加します。

技能実習から特定技能への移行要件の流れ

ビルクリーニング職種は技能実習2号を修了し、特定技能1号に移行することが可能です。ビルクリーニング分野は特定技能1号の対象職種でもあり、以下の要件を満たせば移行が可能です。

  • 技能実習2号を良好に修了していること(評価試験合格済)
  • 特定技能評価試験(清掃業分野)または技能実習修了証明書の取得
  • 日本語能力(N4程度)が求められる

実習実施者(受け入れ企業)の要件は?

特定技能生を受け入れる場合下記の要件を満たす必要があります。

  • ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入
    在留諸申請を行う前に協議会の構成員になる必要があります。加入審査に約1ヶ月程かかるため早めの加入手続きをお勧めいたします。
    入会方法などにつきましては下記のURLをご参照ください。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/blc_tokuteiginou03.html
  • 特定技能として新たに雇用契約を結ぶ

ちなみに特定技能は通算5年間の在留が可能です。技能実習期間を含めると長期的な就労が可能になります。

ビルクリーニング技能検定について

技能実習制度では、段階ごとに下記のように技能評価試験があります。※日本人対象のものとは異なります。

技能実習1号 → 技能検定基礎級
技能実習2号 → 技能検定随時3級(または随時2級)
技能実習3号 → 上級技能検定(随時2級以上)

試験内容は実技と学科で構成され、清掃技術、安全管理、作業手順などが評価されます。

詳しくは下記のURLをご参照ください。
https://www.j-bma.or.jp/qualification-training/foreigner

ビルクリーニングで技能実習生を受け入れる際の注意点

労働条件の適正化

日本人従業員と同等の労働条件であることが必要です。

外国人だからと言って人権などを無視した労働条件を強いてしまうと当然ながら労働基準法に違反し、罰則があります。

技能実習認定計画の遵守

認定計画外の実習内容等をした場合は技能実習法違反となりますので、業務内容は事前に監理組合にご相談をお勧めいたします。

日本語や文化のサポート

生活面での支援体制を整えること(買い物、病院、交通機関の使い方など)→サポートをすることにより実習生とのコミュニケーションも増え、良好な関係性を築きやすくなります。

ハラスメント防止

言葉の壁や文化の違いによる誤解を防ぐため、事前に社内教育が必要です。

長時間労働、過度な残業の禁止

日本人同様、労働基準法を遵守してください。

キャリア形成の支援

技能習得だけでなく、将来母国で活かせるようなサポートが望ましいです。

宗教への理解

受け入れる国籍で信仰する宗教が違うため、それぞれの宗教の特徴やタブーとされている事は事前に調べ、その国への理解を深めておくことをおすすめします。

まとめ

ビルクリーニング業界における外国人技能実習生の受け入れは、労働力の補完にとどまらず、国際的な人材育成にも貢献する重要な取り組みです。制度を適切に理解し、実習生が安心して働ける環境を整えることで、企業にとっても大きなメリットとなります。また、将来的に特定技能への移行も可能であり、長期的な人材確保にもつながります。今後も国際協力と人材育成を意識しながら、実習生とともに成長できる仕組み作りが求められます。