農家の高齢化・人手不足が深刻化するなか、農業分野での技能実習生の受け入れ人数は年々増えています。ここでは、農業で技能実習生を受け入れる場合の要件と注意点についてご説明します。
農業の受け入れ可能職種・作業
農業分野での受け入れ職種には「耕種農業」と「畜産農業」の2種類があります。
さらに「耕種農業」は施設園芸、畑作・野菜、果樹の3つの作業に分類され、「畜産農業」は養豚、養鶏、酪農の3つの作業に分類されます。
耕種農業 | 施設園芸 | 温室やビニルハウス等の施設を利用して行う園芸作物〔穀物、野菜、花き(井)等)の栽培作業 |
畑作・野菜 | 畑(露地)で行う作物(稲以外の穀物、野菜、豆、芋等)を組み合わせた周年栽培作業 | |
果樹 | 果樹園(温室等の施設利用を含む)を利用して行う果樹(その果実が食用に供される永年作物)の周年栽培作業 | |
畜産農業 | 養豚 | 豚を家畜として養する作業(「繁殖作業」、「育成作業」、「肥育作業」が含まれる) |
養鶏 | 採卵用鶏(うずら、アヒル等は除く。)の飼養及び採卵作業 | |
酪農 | 乳牛(将来の搾乳を目的とする小牛を含む。)の飼養及び牛乳の生産作業 |
技能実習生に関する要件
技能実習生として来日する外国人は以下の要件を全て満たす必要があります。
- 18歳以上であること
- 帰国後に技能実習で修得した技能を活かした業務に従事することを予定していること
- 技能実習で行う業務と同種の業務に本国で従事していた経験がある、もしくは本国の職業訓練校等にて同種の業務に関連する教育課程を修了していること
- 本国、もしくは住所がある地域の地方公共団体等から推薦を受けていること
- 過去に第1号技能実習を利用したことがないこと
技能実習実施者・受け入れ企業に関する要件
技能実習生を受け入れる実習実施者は以下の要件を全て満たす必要があります。
- 常勤の役員または職員の中から過去3年以内に技能実習責任者講習を受けた者を技能実習責任者として選任すること
- 常勤の役員または職員の中から実習生が習得しようとする技能等について5年以上の経験を有する者を技能実習指導員として選任すること
- 常勤の役員または職員の中から生活指導員を選任すること
- 日本人従業員と同等額以上の報酬を技能実習生に支払うこと
- 技能実習生のための適切な宿泊施設を確保すること
- 労災保険等の保障措置をとっていること
- 3号技能実習生(4・5年目の実習生)を受け入れる場合は、優良な実習実施者として認定を受けていること
※労災保険に関して暫定任意適用事業所である場合、通常は任意加入となっていますが、技能実習生を受け入れる場合は労災保険または民間の任意保険への加入が義務付けられています。
農業で受け入れできる実習生の人数
技能実習生の受け入れ人数枠は、常勤職員数によって異なります。
個人事業主である農家の常勤職員については、確定申告をした前年分の収支内訳書(農業所得用)のうち「事業専従者の氏名等」欄に氏名の記載があるか、また当該専従者の就労状況等を確認した上で常勤職員として認められるかが判断されます。
技能実習から特定技能への移行が可能
農業で外国人労働者を雇用するには、技能実習生の受け入れの他に特定技能外国人を雇用するという方法もあります。
特定技能外国人と技能実習生の特徴的な違いは以下の通りです。
- 特定技能外国人の受け入れ人数には上限は設けられていません。
- 特定技能2号になると期間の上限なしで在留できます。(技能実習期間は1号~3号までの通算5年までとなっています。)
- 特定技能1号の場合は単純労働を含む業務に従事させることができます。(技能実習生の場合、同一作業の繰り返しのみのいわゆる単純作業を行わせることは認められていません)。
- 特定技能外国人は派遣労働者としての雇用が認められているため、農繫期のみの雇用が可能となります。(技能実習では派遣労働としての実習は認められていません。)
農業分野で技能実習2号まで修了した技能実習生(3年間の技能実習を修了した技能実習生)は、特定技能試験を受けることなく特定技能へと移行することができます。技能実習期間で基礎を習得してもらった後に特定技能生としてマルチに活躍してもらうのもいいのではないでしょうか。
農業で技能実習生を受け入れる場合の注意点
農業分野で技能実習生を受け入れる場合、日本人従業員を雇用する場合と雇用管理上異なる部分があるので注意が必要です。
労災保険について
前述のとおり労災保険の暫定任意適用事業所であっても、技能実習生を受け入れる場合は労災保険の加入または民間の任意保険への加入が必要です。日本人従業員の場合は任意加入となっているため、加入されていない農家の方等はご注意ください。
残業代について
日本人従業員の場合、農業では労働基準法の一部が適用除外されており、残業代は通常賃金(割増しない賃金)の支給で足りますが、技能実習生の場合はこの適用除外が適用されません。つまり、労働基準法に基づいて割増賃金を支給しなくてはなりません。
まとめ
農業分野で外国人技能実習生を受け入れる場合、従事させたい業務が技能実習生に行わせることができる作業として認められているものなのかを確認し、労務管理上の日本人との違いを認識することが大切です。