技能実習を導入しようとする際に「監理団体」へ相談することになると思います。今回はその監理団体の説明をしてまいります。
監理団体とは?
技能実習には「企業単独型技能実習」と「団体監理型技能実習」の2種類があります。
「企業単独型」は日本企業等が海外の現地法人やグループ会社等の職員を受け入れて実習を行う方式であり、「団体監理型」は非営利の監理団体が実習生を受け入れ、団体を構成する企業等を実習実施者として、技能実習を行う方式です。
後者の「団体監理型技能実習」が実際の技能実習の大きな割合を占めています。「団体監理型」の場合には実習認定を受けた技能実習計画に基づき、監理許可を受け実習管理を行う事業をする日本国内の非営利の監理団体と技能実習生を受け入れる企業等(以下、実習実施者)が協力して技能実習を行うこととなっています。
監理団体になるための要件
「外国人の技能実習の適正な実施及び実習生の保護に関する法律」(略称:外国人技能実習法)には8つの要件が記載されています。
- 日本国内の営利を目的としない法人であること(商工会議所、商工会、協同組合や公益財団法人など)
- 監理事業を法律等の基準に則り実施できる能力があること
- 監理事業を健全に遂行できる財産的な基礎があること
- 個人情報を適正に管理し、関係する団体・個人の秘密を守ることができること
- 実習実施者だけで団体運営を行ったりせず、監査についても実習実施者のみで行うことをせず、適正な運営体制ができていること
- 外国の送出機関からの取次ぎを行う場合には、契約が結ばれていること
- 第3号技能実習を行う場合(一般監理事業)にはその要件(優良要件)を満たしていること
- 監理事業を実施するための申請を適正に行う能力があること
※実習実施者の認定要件もあるのでご注意ください
監理団体の役割
監理団体は、実習実施者が技能実習計画に基づき、適正に技能実習が行われるようにするために、以下のような役割を担っています。
①訪問監査・指導
監理団体は、実習実施者が技能実習計画に基づき、適正に技能実習が行われているかを監査し、適正に行われていない場合には適正に行われるように指導するという大きな役割があります。また監査を実施した場合には監査報告書を提出する義務があります。
訪問監査は3ヶ月に1回は実施しなければなりません(第1号技能実習の期間は1カ月に1回)。訪問した際には、技能実習計画に基づいた技能実習が行われているかを確認するために技能実習責任者や指導員からのヒアリング、技能実習生との面談、設備・帳簿の確認、生活環境や宿泊施設の確認等を実施します。
また上記内で問題がある場合には適正に技能実習が行われるように実習実施者に対して指導を行う必要があります。
②技能実習計画の作成や各種届出のサポート
技能実習生を受け入れるためには技能実習計画の認定を受ける必要があります。技能実習計画の策定では監理団体が指導を行いながら実習実施者が作成いたします。また計画の変更等についての届出や入国管理局への申請書類の作成等のサポートも行い、技能実習が適正に実施できる環境を実習実施者と作っていきます。
③実習実施者が技能実習生を受け入れるためのサポート
技能実習生を受け入れる実習実施者や海外から技能実習生を送り出す送出機関に対し、制度への理解(特に技能実習制度の目的が「国際貢献」にあること)をしてもらい、適正な技能実習を行える環境を作ることは重要な役割です。その理解がある送出機関を選定し、契約を締結するところから受け入れがスタートします。
また海外から技能実習生を受け入れる実習実施者にとっては、海外での選考や入国に必要な申請書作成などは、言語の違いや専門性の必要性からハードルが低いとはいえません。そのサポートをしっかり行い、法律等で定められている対応をしっかりと行いながら技能実習生の受け入れを行うことで適正な技能実習がスタートできるようにすることは監理団体の役割となっています。
④日本で技能実習を行う技能実習生のサポート
技能実習生の母国と日本では言語・文化が大きく異なります。入国にあたり必要な講習を送出機関等と連携して実施し、また技能実習期間中には、実習責任者と協力し、適正な技能実習実施が行えるように生活環境や居住環境を整えることも監理団体の役割です。また技能実習終了後の帰国等のサポートも行います。
監理団体の選び方のポイント
要件や役割からみえる監理団体の選ぶ基準は以下の大きな3つのポイントといえます。
①技能実習制度を理解し、適正な運用ができるための専門的な知識や経験があるか?
適正な技能実習ができない場合には、実習実施者にペナルティが課されることもあり、且つ最悪の場合には技能実習制度を利用できなくなることもありますので、実績等を考慮し監理団体を選ぶ必要があります。
②サポート内容及びサポート体制(専属の通訳や専門知識の取得能力等)があるか?
実習実施者のみで言語・文化の違う外国人技能実習生をサポートすることは難しいことがあります。監理団体がどのようなサポート内容をもっているか、また体制があるかの確認は重要です。また技能実習制度及びその運用はまだ流動的で、改正されることなども多いため、最新の情報を把握し、提供してもらえる体制があるかの確認も必要です。
③送出機関との関係はしっかりしているか?
技能実習生を受け入れる際には、海外の送出機関との契約に基づき、その取次ぎを監理団体が行うこととなります。しっかりとした送出機関の選定をしているか?は実習実施者にとっては重要な確認事項となります。特に技能実習生について問題が起こった際には、監理団体と送出機関との関係性や送出機関の質が大きな影響を与えることとなります。
監理団体と登録支援機関との違い
監理団体は以上に記載している通りの団体ですが、似たような言葉として登録支援機関という言葉を聞くことがあると思いますが、その違いについて簡単に説明いたします。
端的にいうと、技能実習制度を支援するのが監理団体、特定技能制度を支援するのが登録支援機関となります。登録支援機関は、特定技能制度を利用する企業等が受け入れた特定技能外国人の支援をサポートする機関となります。サポート内容としては、入国前の事前ガイダンスから始まり、入出国の支援、住居・生活環境の整備支援、自治体への申請支援、日本語学習のサポート、日本人との交流促進、各種相談対応などを3ヶ月に1回の定期的な面談等を通じて行うこととなります。
尚、2024年6月14日、技能実習に代わる新たな制度「育成就労」を新設するための関連法の改正が、国会で可決・成立しました。目的も、「開発途上地域等の経済発展を担う『人づくり』への協力」から、「特定技能1号水準の技能を有する人材の育成」、「育成就労産業分野における人材の確保」へと変更となります。制度運用の詳細についてはまだ不確実な部分がありますが、監理団体は監理支援機関へ名称変更となります。
まとめ
「団体監理型技能実習」を利用しようとする場合に実習実施者にとっては、「適正な技能実習ができるか=信頼できる監理団体を選定できるか」といえるぐらい重要なポイントとなります。管理費も含め、しっかりと監理団体を選定することは重要です。