育成就労制度の対象職種とは?

 これまでの技能実習制度に代わり、「育成就労制度」を新たに創設することが予定されています。外国人材の受入れ企業として、育成就労制度の対象職種について詳しく知りたい採用担当の方は多いのではないでしょうか。

 今回は、育成就労制度の概要とともに、技能実習制度の対象職種に関する課題や、その課題を解決する育成就労制度のポイントなどを解説します。新制度の開始に備え、ぜひ参考にしてください。

育成就労産業分野について

 育成就労制度の職種は「育成就労産業分野」と呼ばれ、特定技能制度の受入れ分野の中で就労を通じて技能を身につけるのに適した分野と定義されています。

 これまで技能実習では受入れ可能でも特定技能では対象外だった職種・作業のほとんどが、特定技能の対象となりました。つまり、「現在、技能実習生を受け入れている企業様は、育成就労でも継続して受け入れられる可能性が非常に高くなった」といえます。

育成就労でも対象となる職種

 育成就労制度の受け入れ対象分野・職種は、特定産業分野と原則一致しています。あくまで「原則」としているのは、国内での育成になじまない分野は、育成就労の対象外となるためです。基本的には以下の特定産業分野における業種・職種が対象となります。

  • ビルクリーニング
  • 介護
  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • 建設
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備
  • 航空
  • 宿泊
  • 飲食料品製造業
  • 外食業
  • 農業
  • 漁業

※農業分野や漁業分野のように、季節によって業務内容や業務量が変わる分野では、実情に応じて派遣の形態での受け入れを認めることが示されています。

育成就労制度への移行に伴って対応職種が減少しますが、その対応策として特定技能制度の対象分野の追加も予定されています。具体的には上記の12分野に加え、以下の4分野が追加される予定です。

  • 自動車運送業
  • 鉄道
  • 林業
  • 木材産業

※「工業製品製造業分野(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業から名称変更予定)」「造船・舶用工業分野」「飲食料品製造業分野」では、対象業務の追加も予定されています。

※業務範囲が拡大するとはいえ、「農業」分野と「漁業」分野の両方で働くなど、分野をまたぐことはできません。

育成就労でも対象外となる技能実習職種と作業

<魚業>

職種作業
漁船漁業棒受網漁業

<建設>

職種作業
さく井パーカッション式さく井工事
ロータリー式さく井工事
冷凍空気調和機器施工冷凍空気調和機器施工
建具製作木製建具手加工
石材施工石材加工
石張り
タイル張りタイル張り
サッシ施工ビル用サッシ施工
防水施工シーリング防水工事
ウエルポイント施工ウエルポイント施工
築炉築炉

<その他の技能実習の職種>

職種作業
紡績運転前紡工程
精紡工程
巻糸工程
合ねん糸工程
織布運転準備工程
製織工程
仕上工程
染色糸浸染
織物・ニット浸染
ニット製品製造靴下製造
丸編みニット製造
たて編ニット生地製造たて編ニット生地製造
婦人子供服製造婦人子供既製服縫製
紳士服製造紳士服製造
下着類製造下着類製造
カーペット製造織じゅうたん製造
タフテッドカーペット製造
ニードルパンチカーペット製造
帆布製品製造帆布製品製造
布はく縫製ワイシャツ製造
座席シート縫製自動車シート縫製

<その他>

職種作業
家具製作家具手加工
印刷オフセット印刷
グラビア印刷
製本製本
プラスチック成形ブロー成形
紙器・段ボール箱製造印刷箱打抜き
印刷箱製箱
貼箱製造
段ボール箱製造
陶磁器工業製品製造機械ろくろ成形
圧力鋳込み成形
パッド印刷
リネンサプライリネンサプライ
コンクリート製品製造コンクリート製品製造
宿泊接客・衛生管理
RPF製造RPF製造
鉄道施設保守整備軌道保守整備
ゴム製品製造成形加工
押出し加工
混練り圧延加工
複合積層加工
空港グランドハンドリング航空貨物取扱
客室清掃

育成就労の対象職種は拡大する可能性がある

 技能実習の職種は、特定技能の業務範囲の拡大や産業分野の追加により、新たに特定技能・育成就労の産業分野に対応することになる場合があります。

 特定技能の業務範囲拡大を理由に、技能実習の繊維・衣服関係等(21職種38作業)が特定技能の工業製品製造業分野に、とび・配管等(8職種11作業)が特定技能の造船・船用工業分野に関連させられました。

 これまで、繊維・衣服関係は、特定技能産業分野には該当しませんでしたが、これにより、育成就労制度においても繊維・衣服関係で外国人の受け入れが可能になるでしょう。

育成就労制度における知っておくべきポイント

 育成就労は技能実習に代わる制度ですが、職種以外にも次の点が変更されます。

①日本語要件

 日本語能力A1相当以上の試験(例:日本語能力試験N5)に合格するか、出入国在留管理庁が認定する日本語教育機関で試験合格に相当する日本語教育を受講することが要件となる予定です。

 日本語能力「A1」は、日本語能力試験(JLPT)の「N5」に相当し、初歩的な日本語をある程度理解できるレベルです。

 そして、育成就労から特定技能1号に移行する際には、さらに高度な日本語能力が求められます。継続的な学習が必要な枠組みにすることで、外国人材の日本語能力の向上が期待されるでしょう。

②転籍・転職

 技能実習制度では原則不可能だった「転籍」について、育成就労制度では制限が緩和されます。

  • 「やむを得ない事情がある場合」の転籍範囲を拡大・明確化し、手続きを柔軟化する
  • 本人の意向による転籍も認める
  • 転籍前の受け入れ機関の初期費用負担については、正当な補填が受けられるよう措置をとる

③監理・支援体制

 育成就労制度では、外部監査人の設置や受入れ機関と密接な関係を有する役職員の関与の制限などにより、独立性を担保する予定となっています。また、名称は監理団体から監理支援機関へ変更されます。

④手数料分担の仕組み

 育成就労制度では、外国人材が送り出し機関に支払う手数料の負担を軽減するため、外国人材と受入れ機関が適切に分担する仕組みを導入する予定です。

⑤日本語能力向上方策

 技能実習制度で課題となっている実習生の日本語能力不足を改善するため、入国前や特定技能1号への移行時に日本語要件を設けるほか、次の方策が取られる予定です。

  • 日本語教育支援に取り組んでいることを優良受入れ機関の認定要件にする
  • 日本語教育機関認定法の仕組みを活用し、教育の質の向上を図る

※育成就労の外国人材が活躍できるかどうかは、日本語能力が重要になってきます

まとめ

 技能実習制度では、対象職種が特定産業分野と一致しておらず、外国人材を長期的に雇用できないケースが多くありました。また、対象職種が細分化されており、外国人材に従事してもらえる業務範囲が限定的な点も問題です。

 育成就労制度の職種は「育成就労産業分野」と呼ばれ、特定技能と同じ分野が適用される予定です。技能実習制度から育成就労制度への移行に伴い、これまで外国人を受け入れていた業種であっても、受け入れができない可能性があるため注意が必要です。

 育成就労制度では、受け入れ対象分野・職種が特定産業分野と原則一致し、従事可能な業務範囲が広がる見込みとなっています。加えて、転籍の制限が緩和されることや日本語能力の要件が追加されることなども、新制度のポイントです。

 特定技能の業務範囲拡大に伴い、外国人受け入れ可能な業種が増える見込みです。そのため、最新情報の確認が重要です。

 初めて外国人材を受け入れる企業様でも安心できるように、幅広いサービスを提供しています。外国人の採用を検討中の段階でも、まずはお気軽にお問い合わせください。