「技能実習制度を利用しようと検討しているものの、言語や文化が違う外国人を受け入れることは小さくなくリスクと感じるし、少しでもコストを下げることでリスクを小さくしたい」と考える経営者は多いと思います。その際に利用できる補助金や助成金があれば、その要望に応えることとなると思いますので、本コラムではそのヒントを記載いたします。
補助金と助成金の違い
補助金と助成金の本来の意味に違いはありませんが、助成金は一定の要件を満たしていればほぼもらえる資金なのに対して、助成金は国や地方自治体が目標や政策達成のために、その目標や政策と合致する企業や団体に支援をする資金であり、条件が厳しいという大きな違いがあります。
補助金とは
返済は必要としない資金が多く、それぞれの補助金によって補助率が違います。審査は、補助金で実現したい目標や政策に合致しているかで判断され、難易度は高い。事業や投資に関するものが多く、銀行やコンサルタントに相談することが多いです。
助成金とは
補助金と同様で、返済は必要としない資金が多く、それぞれの助成金によって助成率が違います。審査は形式的なものが多く、難易度は低い。人に関するものが多く、社会保険労務士や税理士に相談することが多いです。
※注意※以下の補助金・助成金は2025年8月段階の一例です。あくまでどのようなものがあるかということで記載していますので、ご自身で最新の情報を取得するようにしてください。
技能実習生の受け入れでもらえる補助金
九州では、県単位で「日本語教育支援」「介護分野人材受入支援」「農林水産業人材受入支援」などの補助金があります。事業体のある地域の都道府県や市町村のHP等を確認してみるとよいと思います。
福岡県:外国人技能実習生等受入企業支援補助金
実習生の確保・定着促進に向け、魅力発信や住環境整備にかかる経費を補助
令和7年8月1日(金)~令和7年12月26日(金)
対象経費の一部を補助
※詳細は福岡県内市町村のHPあるいは福岡県中小企業団体中央会HP(https://www.chuokai-fukuoka.or.jp/news/detail.php?seq=10769)をご確認ください
佐賀県:外国人日本語力向上支援補助金
在住外国人の日本語力向上のため、県内事業者等が雇用する外国人の日本語力向上のために実施する研修に必要な経費の一部を補助。
県内で外国人を雇用している事業者等(監理団体、登録支援機関含む)
20万円(補助率1/2)
令和8年1月30日(金)
日本語研修に係る経費(講師謝金・旅費、会場費、委託料、テキスト代等)
※詳細は佐賀県HP(https://www.pref.saga.lg.jp/kiji003109983/index.html)をご確認ください
※2025年8月現在の補助金となります。ご活用される際にはご自身で最新の情報を取得されるようにしてください。
技能実習生の受け入れでもらえる助成金
助成金に関しては厚生労働省関連の人材確保・人材育成に関するものが多いです。社会保険労務士等に相談してみるとよいと思います。
厚生労働省:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
概要
外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行などに関する知識の不足や言語の違いなどから、労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向にあります。この助成金は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、その経費の一部を助成するものです。
要件
(1)外国人労働者を雇用している事業主であること
(2)認定を受けた就労環境整備計画に基づき、外国人労働者に対する就労環境整備措置(1及び2の措置に加え、3~5のいずれかを選択)を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること
- 雇用労務責任者の選任
- 就業規則等の社内規程の多言語化
- 苦情・相談体制の整備
- 一時帰国のための休暇制度の整備
- 社内マニュアル・標識類等の多言語化
(3)就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること
※その他、雇用関連助成金共通の要件があります。
助成金額
受給要件をすべて満たした場合に、支給対象経費の合計額に助成率を乗じた下表の額が支給されます。
〇賃金要件を満たしていない場合 支給対象経費額の1/2(上限57万円)
〇賃金要件を満たしている場合 支給対象経費額の2/3(上限72万円)
支給対象経費
計画期間内に、事業主から外部の機関又は専門家等(以下「外部機関等」という)に対して支払いが完了した以下の経費を対象とします。
- 通訳費(外部機関等に委託をするものに限る)
- 翻訳機器導入費(事業主が購入した雇用労務責任者と外国人労働者の面談に必要な翻訳機器の導入に限り、10万円を上限とする)
- 翻訳料(外部機関等に委託をするものに限り、社内マニュアル・標識類等を多言語で整備するのに要する経費を含む)
- 弁護士、社会保険労務士等への委託料(外国人労働者の就労環境整備措置に要する委託料に限り、顧問料等は含まない)
- 社内標識類の設置・改修費(外部機関等に委託をする多言語の標識類に限る)
★その他、厚生労働省関連では、雇用関係助成金、キャリアップ助成金、労働条件等関係助成金で利用可能なものもあります。
外国人技能実習生の助成金・補助金を受け取る際の注意点
まずは受給要件を満たす必要があります。各種補助金・助成金により要件が違いますので、その要件を達成する必要があります。
また申請書類等の作成を自社内で行う必要はありますが、専門的な知識等が必要なことがあり、士業や各種コンサルタントに書類作成やそのサポート、アドバイス等が必要な場合があり、その分、コストがかかることがあります。
最後は資金が支給されるまでに時間がかかるということです。1年後の支給というのも珍しくありません。その間は事業体としては形式上立替をすることになりますので注意が必要です。
まとめ
人材確保ができるかどうかが、事業の持続可能性が左右されるようになって久しくなりました。労働人口については18年~20年経なければ大きな変化にはつながらず、現在の日本を取り巻く環境は非常に厳しいものがあります。
そこで技能実習制度や特定技能制度を含む外国人労働者に大きな期待がかかるようになってきました。様々な形の補助金・助成金があるのもその社会的な反映といえます。
とはいえ、言語・文化の違う外国人を日本企業に受け入れるためには大きなリスクも伴います。そのリスクの中を低減し、外国人の力を活用することで事業の持続可能性や拡大を目指していきたいです。