技能実習1号・2号・3号の違い

 技能実習制度は、日本国内で外国人が特定の技能を習得し、その後母国で活用することを目的として設けられた制度です。この制度は、労働力不足を補うだけでなく、実習生が母国での経済発展や生活向上に寄与することを目指しています。技能実習には1号、2号、3号の3段階があり、それぞれ目的や対象者、在留期間に違いがあります。技能実習1号は基本的な技能習得、2号は中級レベルの技能習得、3号は高度な技能習得を目的としています。こうした段階的な制度設計により、実習生が効率的に技能を学び、成長できる仕組みが整えられています。以下で、各段階の詳細について解説します。

技能実習1号とは

 技能実習1号は、技能実習の第一段階に位置付けられるもので、主に基本的な作業や技術を学ぶ期間です。この段階では、以下のような特徴があります。

  • 対象者:来日し、初めて技能実習を開始する外国人
  • 在留期間:原則1年間
  • 目的:実習を行う外国人の母国地域の発展に寄与することのできる技能が学べる職種や作業あれば、どの職種でも基本的には受け入れが可能
  • 実施機関:来日した外国人が技能を学ぶ企業であり、技能実習生は実習先の企業と直接雇用契約を結ぶ

 技能実習1号は、技能実習2号や3号に進むための基礎となる期間です。この期間中、外国人技能実習生は基本的な技術や安全対策について学びます。

技能実習2号とは

 技能実習2号は、技能実習1号を修了した技能をさらに習熟させるための活動が行える在留資格です。この段階では、実際の作業を通じて、技能の向上させ、国が規定する技能検定3級相当の実技試験に合格することを目標とします。

  • 対象者:技能実習1号を修了し、技能実習評価試験の基礎級に合格した者
  • 在留期間:最長2年間
  • 目的:技能検定3級に相当する技術を習得すること
  • 実施機関:原則技能実習1号と同様の企業にて実習は行われる

 技能実習2号では、外国人技能実習生が一定の技能を持ち、日本国内での実務経験を積むことが求められます。技能実習2号では1号とは異なり移行できる対象職種が限定されており、また1号と同様の職種にしか進むことができません。

技能実習3号とは

 技能実習3号は、技能実習2号を修了した者が進むことのできる最終段階です。この段階では、高度な技能をさらに発展させ技能検定2級に相当する技術を身に着けることを目標とします。

  • 対象者:技能実習2号を修了し、技能検定3級に合格した者
  • 在留期間:最長2年間
  • 目的:熟練した技能を身に付け、母国で活用するためのスキルを完成させること
  • 実施機関:技能実習生の希望に応じて、実習先を変更することも可能

 技能実習3号は、技能実習制度の集大成ともいえる段階であり、実習生が熟練工として成長することを目的としています。

 このように、技能実習1号から3号にかけて、技能の習得レベルが段階的に高まり、実践的な訓練が進む仕組みになっています。

技能実習1号から2号への移行要件

 技能実習1号から2号に移行するためには、一定の要件を満たす必要があります。

  • 実習内容の修了:技能実習1号で計画された内容を全て修了していること
  • 試験の合格:実習生が実務経験を積み、所定の技能評価試験(基礎級試験)に合格していること
  • 在留資格の更新:必要書類を提出し、在留資格の更新手続きを行うこと

 技能実習1号から2号への移行は、実習生にとって大きなステップアップを意味します。この段階では、より専門的な知識や実務に基づくスキルが求められるようになります。

技能実習2号への移行対象職種

 技能実習2号への移行が可能な職種は、技能実習制度で定められた対象職種に限定されます。現在、91職種167作業が対象となっています(令和6年9月30日時点)。対象職種は下記の通り。これらの職種では、技能実習1号で学んだ基本的な技能を基に、より高度な技能を習得することが求められます。また、受入れ企業も実習生が成長できる環境を提供する必要があります。

1 農業・林業関係(3職種7作業)
1-1-1 耕種農業(施設園芸)
1-1-2 耕種農業(畑作・野菜)
1-1-3 耕種農業(果樹)
1-2-1 畜産農業(養豚)
1-2-2 畜産農業(養鶏)
1-2-3 畜産農業(酪農)
1-3-1 林業(育林・素材生産)

2 漁業関係(2職種10作業)
2-1-1 漁船漁業(かつお一本釣り漁業)
2-1-2 漁船漁業(延縄漁業)
2-1-3 漁船漁業(いか釣り漁業)
2-1-4 漁船漁業(まき網漁業)
2-1-5 漁船漁業(ひき網漁業)
2-1-6 漁船漁業(刺し網漁業)
2-1-7 漁船漁業(定置網漁業)
2-1-8 漁船漁業(かに・えびかご漁業)
2-1-9 漁船漁業(棒受網漁業) ※3号に移行することはできません
2-2-1 養殖業(ほたてがい・まがき養殖作業)①ほたてがい養殖作業②まがき養殖作業

3 建設関係(22職種33作業)
3-1-1 さく井(パーカッション式さく井工事作業)
3-1-2 さく井(ロータリー式さく井工事作業)
3-2-1 建築板金(ダクト板金作業)
3-2-2 建築板金(内外装板金作業)
3-3-1 冷凍空気調和機器施工(冷凍空気調和機器施工作業)
3-4-1 建具製作(木製建具手加工作業)
3-5-1 建築大工(大工工事作業)
3-6-1 型枠施工(型枠工事作業)
3-7-1 鉄筋施工(鉄筋組立て作業)
3-8-1 とび(とび作業)
3-9-1 石材施工(石材加工作業)
3-9-2 石材施工(石張り作業)
3-10-1 タイル張り(タイル張り作業)
3-11-1 かわらぶき(かわらぶき作業)
3-12-1 左官(左官作業)
3-13-1 配管(建築配管作業)
3-13-2 配管(プラント配管作業)
3-14-1 熱絶縁施工(保温保冷工事作業)
3-15-1 内装仕上げ施工(プラスチック系床仕上げ工事作業)
3-15-2 内装仕上げ施工(カーペット系床仕上げ工事作業)
3-15-3 内装仕上げ施工(鋼製下地工事作業)
3-15-4 内装仕上げ施工(ボード仕上げ工事作業)
3-15-5 内装仕上げ施工(カーテン工事作業)
3-16-1 サッシ施工(ビル用サッシ施工作業)
3-17-1 防水施工(シーリング防水工事作業)
3-18-1 コンクリート圧送施工(コンクリート圧送工事作業)
3-19-1 ウェルポイント施工(ウェルポイント工事作業)
3-20-1 表装(壁装作業)
3-21-1 建設機械施工(押土・整地作業)
3-21-2 建設機械施工(積込み作業)
3-21-3 建設機械施工(掘削作業)
3-21-4 建設機械施工(締固め作業)
3-22-1 築炉(築炉作業)

4 食品製造関係(11職種18作業)
4-1-1 缶詰巻締(缶詰巻締)
4-2-1 食鳥処理加工業(食鳥処理加工作業)
4-3-1 加熱性水産加工食品製造業(節類製造)
4-3-2 加熱性水産加工食品製造業(加熱乾製品製造)
4-3-3 加熱性水産加工食品製造業(調味加工品製造)
4-3-4 加熱性水産加工食品製造業(くん製品製造)
4-4-1 非加熱性水産加工食品製造業(塩蔵品製造)
4-4-2 非加熱性水産加工食品製造業(乾製品製造)
4-4-3 非加熱性水産加工食品製造業(発酵食品製造)
4-4-4 非加熱性水産加工食品製造業(調理加工品製造)
4-4-5 非加熱性水産加工食品製造業(生食用加工品製造)
4-5-1 水産練り製品製造(かまぼこ製品製造作業)
4-6-1 牛豚食肉処理加工業(牛豚部分肉製造作業)
4-6-2 牛豚食肉処理加工業(牛豚精肉商品製造作業) ※3号に移行することはできません
4-7-1 ハム・ソーセージ・ベーコン製造(ハム・ソーセージ・ベーコン製造作業)
4-8-1 パン製造(パン製造作業)
4-9-1 そう菜製造業(そう菜加工作業)
4-10-1 農産物漬物製造業(農産物漬物製造)※3号に移行することはできません
4-11-1 医療・福祉施設給食製造(医療・福祉施設給食製造)※3号に移行することはできません

5 繊維・衣服関係(13職種22作業)
5-1-1 紡績運転(前紡工程作業)
5-1-2 紡績運転(精紡工程作業)
5-1-3 紡績運転(巻糸工程作業)
5-1-4 紡績運転(合ねん糸工程作業)
5-2-1 織布運転(準備工程作業)
5-2-2 織布運転(製織工程作業)
5-2-3 織布運転(仕上工程作業)
5-3-1 染色(糸浸染作業)
5-3-2 染色(織物・ニット浸染作業)
5-4-1 ニット製品製造(靴下製造作業)
5-4-2 ニット製品製造(丸編みニット製造作業)
5-5-1 たて編ニット生地製造(たて編ニット生地製造作業)
5-6-1 婦人子供服製造(婦人子供既製服縫製作業)
5-7-1 紳士服製造(紳士既製服製造作業)
5-8-1 下着類製造(下着類製造作業)
5-9-1 寝具製作(寝具製作作業)
5-10-1 カーペット製造(織じゅうたん製造作業) ※3号に移行することはできません
5-10-2 カーペット製造(タフテッドカーペット製造作業) ※3号に移行することはできません
5-10-3 カーペット製造(ニードルパンチカーペット製造作業) ※3号に移行することはできません
5-11-1 帆布製品製造(帆布製品製造作業)
5-12-1 布はく縫製(ワイシャツ製造作業)
5-13-1 座席シート縫製(自動車シート縫製作業)

6 機械・金属関係(17職種34作業)
6-1-1 鋳造(鋳鉄鋳物鋳造作業)
6-1-2 鋳造(非鉄金属鋳物鋳造作業)
6-2-1 鍛造(ハンマ型鍛造作業)
6-2-2 鍛造(プレス型鍛造作業)
6-3-1 ダイカスト(ホットチャンバダイカスト作業)
6-3-2 ダイカスト(コールドチャンバダイカスト作業)
6-4-1 機械加工(普通旋盤作業)
6-4-2 機械加工(フライス盤作業)
6-4-3 機械加工(数値制御旋盤作業)
6-4-4 機械加工(マシニングセンタ作業)
6-5-1 金属プレス加工(金属プレス作業)
6-6-1 鉄工(構造物鉄工作業)
6-7-1 工場板金(機械板金作業)
6-8-1 めっき(電気めっき作業)
6-8-2 めっき(溶融亜鉛めっき作業)
6-9-1 アルミニウム陽極酸化処理(陽極酸化処理作業)
6-10-1 仕上げ(治工具仕上げ作業)
6-10-2 仕上げ(金型仕上げ作業)
6-10-3 仕上げ(機械組立仕上げ作業)
6-11-1 機械検査(機械検査作業)
6-12-1 機械保全(機械系保全作業)
6-13-1 電子機器組立て(電子機器組立て作業)
6-14-1 電気機器組立て(回転電機組立て作業)
6-14-2 電気機器組立て(変圧器組立て作業)
6-14-3 電気機器組立て(配電盤・制御盤組立て作業)
6-14-4 電気機器組立て(開閉制御器具組立て作業)
6-14-5 電気機器組立て(回転電機巻線製作作業)
6-15-1 プリント配線板製造(プリント配線板設計作業)
6-15-2 プリント配線板製造(プリント配線板製造作業)
6-16-1 アルミニウム圧延・押出製品製造(引抜加工)※3号に移行することはできません
6-16-2 アルミニウム圧延・押出製品製造(仕上げ) ※3号に移行することはできません
6-17-1 金属熱処理(全体熱処理作業)
6-17-2 金属熱処理(表面熱処理(浸炭・浸炭窒化・窒化)作業)
6-17-3 金属熱処理(部分熱処理(高周波熱処理・炎熱処理)作業)

7 その他(21職種38作業)
7-1-1 家具製作(家具手加工作業)
7-2-1 印刷(オフセット印刷作業)
7-2-2 印刷(グラビア印刷作業) ※3号に移行することはできません
7-3-1 製本(製本作業)
7-4-1 プラスチック成形(圧縮成形作業)
7-4-2 プラスチック成形(射出成形作業)
7-4-3 プラスチック成形(インフレーション成形作業)
7-4-4 プラスチック成形(ブロー成形作業)
7-5-1 強化プラスチック成形(手積み積層成形作業)
7-6-1 塗装(建築塗装作業)
7-6-2 塗装(金属塗装作業)
7-6-3 塗装(鋼橋塗装作業)
7-6-4 塗装(噴霧塗装作業)
7-7-1 溶接(手溶接)
7-7-2 溶接(半自動溶接)
7-8-1 工業包装(工業包装作業)
7-9-1 紙器・段ボール箱製造(印刷箱打抜き作業)
7-9-2 紙器・段ボール箱製造(印刷箱製箱作業)
7-9-3 紙器・段ボール箱製造(貼箱製造作業)
7-9-4 紙器・段ボール箱製造(段ボール箱製造作業)
7-10-1 陶磁器工業製品製造(機械ろくろ成形作業)
7-10-2 陶磁器工業製品製造(圧力鋳込み成形作業)
7-10-3 陶磁器工業製品製造(パッド印刷作業)
7-11-1 自動車整備(自動車整備作業)
7-12-1 ビルクリーニング(ビルクリーニング作業)
7-13-1 介護(介護作業)
7-14-1 リネンサプライ(リネンサプライ仕上げ作業)※3号に移行することはできません
7-15-1 コンクリート製品製造(コンクリート製品製造作業)
7-16-1 宿泊(接客・衛生管理作業) ※3号に移行することはできません
7-17-1 RPF製造(RPF製造作業)
7-18-1 鉄道施設保守整備(軌道保守整備作業)
7-19-1 ゴム製品製造(成形加工作業)※3号に移行することはできません
7-19-2 ゴム製品製造(押出し加工作業)※3号に移行することはできません
7-19-3 ゴム製品製造(混練り圧延加工作業)※3号に移行することはできません
7-19-4 ゴム製品製造(複合積層加工作業)※3号に移行することはできません
7-20-1 鉄道車両整備職種(走行装置検修・解ぎ装作業)
7-20-2 鉄道車両整備職種(空気装置検修・解ぎ装作業)
7-21-1 木材加工職種(機械製材作業)※3号に移行することはできません

99 主務大臣が告示で定める職種及び作業(2職種4作業)
99-1-1 空港グランドハンドリング(航空機地上支援作業)
99-1-2 空港グランドハンドリング(航空貨物取扱作業)
99-1-3 空港グランドハンドリング(客室清掃作業) ※3号に移行することはできません
99-2-1 ボイラーメンテナンス職種(ボイラーメンテナンス作業)※3号に移行することはできません

技能実習2号から3号への移行要件

 技能実習2号から3号に移行するための要件も厳密に定められています。

  • 実習内容の修了:技能実習2号で計画された全ての内容を修了していること
  • 試験の合格:技能評価試験(専門級試験)に合格していること
  • 帰国要件:原則として、一度母国に帰国して一定期間(おおむね1か月)を過ごすこと

 技能実習2号から3号への移行は、より専門的な技能を習得することを目的としています。この段階では、受入れ企業内での業務が実習生の熟練度に応じて高度化します。

技能実習3号への移行対象職種

 技能実習3号に移行可能な職種は、技能実習2号とほぼ同じですが、一部の職種では3号が対象外となる場合もあります。3号に移行できない職種は、上記2号移行対象職種一覧の※を参照ください。

 特に、技能実習3号では受入れ企業と実習生がともに長期的な成長を見据えて取り組むことが重要です。企業側も実習生に対して高度な技能を教える責任が生じます。

技能実習2号から特定技能への移行要件

 技能実習2号を良好に修了した者は、特定技能1号への移行が可能です。特定技能とは2019年4月に新設された就労を目的とした在留資格です。この移行には以下の要件があります。

  • 技能評価試験の合格:技能実習2号を良好に終了する、または特定技能の分野ごとに定められた試験に合格すること
  • 日本語能力試験:原則として、N4以上の日本語能力試験に合格していること
  • 在留資格の変更:特定技能への在留資格変更申請を行うこと

 技能実習2号から特定技能への移行は、技能実習の職種が特定技能で定められている特定産業分野に適合している必要があります。

特定技能の対象職種(特定産業分野)

 特定技能は、14分野にわたる職種が対象となります。例えば、介護、農業、外食業、建設などが含まれます。これらの分野では、即戦力となる人材が求められています。

 特定技能1号の在留期間は最大5年間であり、特定技能2号に移行することで無期限の在留が可能となる場合もあります。これにより、日本の労働力不足を補うだけでなく、実習生にとっても大きなキャリアアップの機会となります。

技能実習3号からも特定技能への移行は可能?

 技能実習3号を修了した者も、特定技能への移行が可能です。その要件は技能実習2号から特定技能に移行する際と原則同じです。技能実習3号を良好に修了した者で特定産業分野に適合した職種であれば、特定技能1号への試験が免除されることが多く、日本語能力試験の要件も一部緩和される場合があります。

 技能実習3号から特定技能への移行は、特に技能の専門性が高い職種で多く見られます。この移行により、実習生はさらに高度な業務に携わることができ、日本の産業界における重要な人材として位置付けられます。

まとめ

 技能実習1号、2号、3号の制度は、それぞれが異なる目的と目標を持ちながら、外国人技能実習生が段階的に技能を習得する仕組みとなっています。また、技能実習2号や3号を修了した後には、特定技能への移行の道が開かれており、日本国内でさらなる活躍が期待されます。

 技能実習制度は、外国人にとって日本で技術を学び、母国でその技術を活かすための貴重な機会であると同時に、日本国内の労働力不足を補う役割となる特定技能への基礎育成の役割も果たしています。この制度の理解を深めることで、より適切な支援や実施が可能となるでしょう。

 特に、技能実習から特定技能への移行が進むことで、受入れ企業側も長期的な視点で人材を育成する必要性が高まります。これにより、日本の産業全体の競争力向上にも寄与することが期待されます。