技能実習生を受け入れるにあたって、実習実施者(受入れ企業)は「技能実習指導員」を選任する必要があります。
技能実習指導員とはどういったものなのか、役割や選任要件、講習についても詳しく解説をしていきます。
技能実習指導員とは
技能実習の目的は「技能実習生が日々の実習を通じて日本の技術を身につけ、将来の母国の発展に寄与すること」です。 そのため、技能実習の目的が達成されたかどうかを客観的に判断するために、技能実習生は技能検定への合格が必須とされています。
技能実習指導員は、技能実習が計画的に行われ、技能実習生が学ぶ日々の実習のサポートをし、技術や知識を修得してもらうための指導を行います。
技能実習生と直に関わるため、技能実習において大変重要なポジションといえます。
技能実習指導員になるための要件
技能実習指導員の選任には、以下の要件を全て満たす必要があります。
- 実習実施者(受入れ企業)の常勤の役員もしくは職員
- 技能実習を行う事業所に所属する者
- 技能実習生に習得させる技能を5年以上経験している
選任のポイント① 実習実施者(受入れ企業)の常勤の役員もしくは職員
パートやアルバイトの方は技能実習指導員になることができません。
選任のポイント② 技能実習を行う事業所に所属する者
技能実習指導員は、技能実習生と同じシフト・同じ現場で働く現場従業員の方から選任する必要があります。また、常に技能実習生と同じ現場にいて、指導をすることが何より求められます。
技能実習機構は、技能実習生と技能実習指導員の出勤簿を確認することがあります。 もし出勤のタイミングが一致していなければ、実習の現場に指導員が不在だったということで、技能実習機構からの指摘対象となる可能性があります。
技能実習指導員は、同じ現場で働く従業員の方の中から選任しましょう。
選任のポイント③ 技能実習生に習得させる技能を5年以上経験している
これは技能実習生が実習を通じて技術や知識を修得していく上で、十分な指導ができるように要件として設けられています。5年以上の経験というのは、「その職種での通算の経験」となります。前職が同じ職種で経験年数の合計が5年以上であれば就任できます。
*介護は資格が必要*
介護職種の技能実習指導員は、介護等の技能等について5年以上の経験を有する者の中から、技能実習生5名につき1名以上選任している必要があります。また、そのうち1名以上は以下のいずれかの資格を持っている必要があります。
- 介護福祉士
- 看護師または准看護師
- 実務者研修修了者(8年の経験が必要)
選任のポイント④ 複数人を選任する
技能実習指導員を1名選任したとしても、その方が常に技能実習生と同じ現場にいることは難しいかもしれません。また、何らかの事情で技能実習指導員の方が仕事を休んだ場合、技能実習指導員が不在となってしまいます。
可能な限り、技能実習指導員は複数人を選任しましょう。
技能実習指導員になれない人
以下に該当する人は技能実習指導員に選任することはできません。
- 技能実習法第10条第1号から第7号まで、または第9号のいずれかに該当
- 過去5年以内に入出国または労働に関する法令に関し不正・不当な行為を行った
- 未成年者
技能実習指導員が管理する事項
- 技能実習計画に基づいた教育や訓練の実施、進捗管理、評価など
- 技能実習生が適切に技能を習得できるような現場サポート
- 技能実習生への安全確保
- 技能実習日誌作成
技能実習指導員の講習について
技能実習では技能実習責任者は3年に1度講習を受講することが必須となっていますが、技能実習指導員に関しては講習の受講は義務付けられてはいません。
ただし、技能実習指導員の講習受講履歴は優良な実習実施者の配点に含まれています。優良な実習実施者となると、技能実習3号の受入れが可能となり、受入れ人数枠が増えるというメリットがあります。
技能実習指導員講習の内容
技能実習指導員講習はどういった内容なのか、標準的なカリキュラムを例としてご紹介します。
技能実習指導員講習は「講義」「テスト」「解説」で合計5.5時間となっています。
時間 | 講義時間 | 内容 |
8:30~ | 開場・受付 | |
8:55~9:00 | 5分 | ガイダンス・注意事項 |
9:00~10:00 | 60分 | 講義① 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律について |
10分休憩 | ||
10:10~11:10 | 60分 | 講義② 技能実習指導の行い方 |
10分休憩 | ||
11:20~11:50 | 30分 | 講義② 技能実習指導の行い方(続き) |
11:50~12:20 | 30分 | 講義③ 技能実習生との向き合い方について |
休憩(昼食)60分 | ||
13:20~14:20 | 60分 | 講義④ 労働基準法及び関係労働法令について |
10分休憩 | ||
14:30~15:30 | 60分 | 講義⑤ 労働災害防止・労働災害時対応について |
10分休憩 | ||
15:40~16:10 | 30分 | 理解度テストの実施及び採点 |
16:10~16:20 | 10分 | 受講証明書交付 |
技能実習指導員講習の理解度テストの難易度
技能実習指導員講習では、最後に理解度テストが行われます。テスト問題は全部20問で7割以上(14問以上)の正解で合格となります。テスト形式は〇×形式となっており、問題の内容としても講義の内容をしっかりと聞いていれば答えることができる難易度となっています。
技能実習指導員講習はオンラインでも受講可能
動作環境など条件が揃えば毎月開催されているオンラインでの受講も可能です。
まとめ
技能実習指導員は、技能実習生が円滑に技能を習得するために欠かせない役割を担っています。指導員としての要件を満たし、適切に選任・登録することで、技能実習生の成長をサポートし、企業の発展にも寄与することができます。